2026年7月28日 AIブログ 業務アプリケーション開発

葬儀施行管理システムでも解決しきれない葬儀社の業務——香典・供花・寺院手配の壁

葬儀業界では、事前相談から見積作成、施行管理、発注業務までをクラウドで一元管理する葬儀施行管理システムの導入が進んでいる。慢性的な人手不足とFAX・紙中心の業務が長く残ってきた業界だけに、受付や請求といった特定業務からのスモールスタートでも効果を出しやすい領域とされる。ただ、実際に導入した中小葬儀社の運用を見ると、香典帳の管理、供花・弔電の受発注、返礼品の数量調整、寺院・僧侶への手配連絡といった、式ごとに変動が大きく人の判断が介在する周辺業務には、依然としてExcelや紙、電話連絡が残りやすいという声が聞かれる。

葬儀施行管理システムが担う範囲

事前相談から見積、施行管理、発注業務、供花弔電まで幅広い業務に対応するシステムは、月額2万円台から始められるクラウド型のものも増えており、サーバー不要で段階的に導入できる点が中小葬儀社にとって取り入れやすい理由になっている。式当日の参列者による供花・供物の精算を自動化する自動精算機システムも登場しており、当日の金銭管理の負担軽減に一定の効果があるとされる。

一方で、これらのシステムが標準機能としてカバーするのは施行の骨格にあたる部分が中心で、式ごとに細かく事情が異なる周辺業務まで含めて完結させるのは容易ではないという実情もある。見積・請求・入金確認といった会計寄りの業務は会計ソフトとの連携で対応が進んでいる一方、香典や供花のように相手方(遺族・生花店・寺院)とのやり取りが介在する業務は、システム同士の連携だけでは解消しにくい領域になりやすい。

導入後も残る現場の壁

香典帳——受付の煩雑さと香典返しへの連携

香典帳は通夜・告別式の受付で頂戴した香典を記録するもので、葬儀終了後の香典返しの手配や金額の突き合わせに使われる。Excelで管理すれば関数による金額計算や並び替えは可能になるが、受付要員が複数名に分かれる式では、誰がどの列にどう入力するかの取り決めが式ごとに変わりやすく、施行管理システム側の顧客データと二重管理になっているケースも見られる。

供花・弔電——式直前の変更対応

供花や弔電は、発注から式当日までの時間が短く、施主や親族からの追加・変更依頼が式直前まで発生しやすい。発注・仕入・在庫を統合管理できれば急な追加にも対応しやすくなるとされるが、取引先の生花店ごとに発注フォーマットや連絡手段(電話・FAX・メール)が異なる場合、システムに入力する手間よりも直接連絡の方が早いと判断され、結果として紙のメモや口頭連絡に頼る運用になりやすい。

返礼品——参列者数の読めなさ

返礼品の発注数量は、会葬者数が式直前まで確定しないという葬儀特有の事情に左右される。供花や返礼品は需要変動によるロス(発注過多・不足)が起きやすい品目とされており、当日の会葬者数を見ながら追加発注や返品調整を電話で行う運用が、システム化された見積・請求の外側で個別に処理されやすい。

寺院・僧侶への手配連絡

読経の依頼や日程調整、お布施に関するやり取りは、慣習的に電話や対面での連絡が中心になりやすい業務でもある。担当者の頭の中にある「この寺院はこういう対応をする」という経験則が、システムのマスタデータとして整理されないまま引き継がれているケースは珍しくない。

複数斎場運営時の式場調整

複数の斎場・式場を運営する葬儀社では、式場の空き状況の確認と担当者のアサインを合わせて調整する必要がある。施行管理システムが式ごとの進行管理には対応していても、斎場全体の稼働状況を横断的に見るダッシュボードまでは持たない場合、担当者が別途カレンダーやホワイトボードで空き状況を管理し、システム側の予定と手動で突き合わせる運用が残ることもある。

なぜ周辺業務だけ手作業が残るのか

背景には、葬儀という業務そのものの特性があると考えられる。逝去から通夜・告別式までの猶予は一般的に数日程度しかなく、式の内容は喪家ごと・宗派ごとに個別性が高い。標準化された機能を持つシステムに、これだけ変動幅の大きい業務まで無理に合わせようとすると、かえって現場の判断速度が落ちるという事情もありそうだ(この点は業種特性からの推測であり、個々の葬儀社の運用実態を確認したものではない)。加えて、担当者間の情報伝達に齟齬が生じやすく、顧客情報や過去の施行記録が紙やExcelで分散管理されがちだという業界共通の課題も、周辺業務の属人化を後押ししていると見られる。

葬儀社の業務課題とは

葬儀社の業務課題とは、施行そのものの品質管理に加えて、香典・供花・返礼品・寺院手配など式ごとに変動する周辺業務の情報管理と、担当者の経験に依存した対応(属人化)をどう仕組み化するかという課題を指す。人手不足が進む中小葬儀社ほど、この周辺業務の負荷が担当者の残業や引き継ぎ漏れという形で表面化しやすい。

葬儀施行管理システムを導入すれば周辺業務も自動化できるか

導入するシステムの対応範囲次第、というのが実情に近い。事前相談・見積・施行管理・発注業務まで一元化できても、香典帳や寺院対応履歴のような式ごとに個別性が高い情報は、システムの標準機能の対象外に置かれたままになりやすい。導入を検討する際は、自社で特に負荷がかかっている周辺業務が対象範囲に含まれているかを個別に確認する必要がある。

業種を横断して見えるパターン

葬儀施行管理システムを継続利用しながら、香典帳や供花の発注状況、寺院ごとの対応履歴といった周辺情報だけを別途整理する運用も一つの方法だ。クリーニング店の管理システムで解決しきれない現場業務複数店舗の美容室で予約システムだけでは足りない理由でも見たように、業種を問わず「基幹システムではカバーしきれない、変動が大きく人の判断が絡む周辺業務」が残るパターンは共通して見られる。

既製のシステムに寄せるか、周辺業務側だけを自社の運用に合わせて補う手段を別に持つかは、式の件数や担当者数、周辺業務にかかっている時間次第で判断が分かれるところだろう。

小規模化・家族葬シフトが周辺業務の負荷を増やす面もある

近年は家族葬など小規模な式へのシフトが進んでいるとされる。式の規模が小さくなれば会葬者数や供花の数自体は減る一方、担当者一人が事前相談から施行、周辺業務までを兼務するケースも増えやすく、業務の分業が進みにくい中小葬儀社ほど、香典帳の入力や寺院対応の記録といった細かい作業が特定の担当者に集中しやすい。人手不足が慢性化している業界であることも踏まえると、こうした周辺業務の負荷は式の規模だけでなく、組織体制によっても左右されると考えられる(これも業種特性からの推測であり、個社の実態を調査した結果ではない)。

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