太陽光発電施設の急速な拡大にともない、土砂災害や景観への影響といった問題が各地で報告されてきました。これを背景に、太陽光発電事業に関する許認可制度は近年強化されています。特に大規模な事業では、環境影響評価(環境アセスメント)や林地開発許可など、複数の許認可手続きが必要になる場合があります。これらの手続きは事業スケジュールに大きく影響するため、計画の初期段階で全体像を把握しておくことが欠かせません。本記事では、主要な許認可と、事業者が早めに確認しておくべきポイントを整理します。
環境影響評価法の対象になる太陽光発電とは
太陽電池発電所は2020年4月から、環境影響評価法の対象事業に追加されました。規模に応じて次の2区分に分けられます。
- 第一種事業:発電出力40MW(4万kW)以上。環境影響評価の実施が必須
- 第二種事業:発電出力30MW(3万kW)以上40MW未満。「スクリーニング」という手続きで、個別に環境影響評価を行うかどうかが判定される
出力は、パネルの定格容量(DC)ではなく、系統接続段階の発電出力(ACベース)で判定される点に注意が必要です。なお、蓄電池の併設が進むなど太陽光発電事業を取り巻く状況は変化しているため、規模要件は5年程度を目安に見直しが検討されています。自社の事業がどちらの区分に該当するかは、計画段階で必ず最新情報を確認する必要があります。
環境影響評価の4段階の手続き
環境影響評価法に基づく手続きは、大きく4つの段階に分かれています。
配慮書から評価書まで一連の手続きを終えるには相応の期間を要するため、事業計画の早い段階からスケジュールに組み込んでおく必要があります。各段階では、図書の公開・縦覧や住民説明会の実施が求められます。住民説明会の進め方でも触れたとおり、環境影響評価の枠組みにおいても、各段階で住民への説明機会が組み込まれている点を押さえておく必要があります。
林地開発許可
森林を開発して太陽光発電施設を設置する場合、開発面積が0.5ヘクタールを超えると、都道府県知事の林地開発許可が必要になります。許可にあたっては、開発によって周辺地域に土砂の流出・崩壊や水害などの災害を発生させるおそれがないかが審査されます。
2019年(令和元年)には、自然斜面のまま施設を設置する場合の防災施設の内容や、排水施設の計画、地表保護のための措置などを定めた運用細則が林野庁から示されました。具体的には、調整池や排水路の設置によって雨水が一気に流れ出さないようにすることや、パネル設置面以外の地表を緑化・被覆して土砂の流出を防ぐことなどが、審査で確認される代表的な項目です。防災面の基準は年々整備が進んでいるため、林地に設置を計画する場合は、最新の運用細則を確認しておく必要があります。
その他に確認しておきたい許認可
事業の立地・規模によっては、上記以外にも次のような許認可が関係する場合があります。
- 農地転用許可:農地に設置する場合、農地以外の用途に転用するための許可が必要です。優良農地など転用が認められにくい区分もあるため、立地選定の段階で確認が必要です
- 開発許可(都市計画法):市街化区域・市街化調整区域などで、一定規模以上の土地の区画形質の変更を伴う場合に必要です
- 自然公園法・砂防法など:立地が国立公園・自然公園や砂防指定地などの該当エリアにかかる場合、それぞれの法令に基づく許可・届出が必要になります
どの許認可が必要になるかは立地条件によって異なるため、計画の初期段階で自治体・関係機関への確認を行うことが重要です。許認可の種類が多く、事業者だけで全体を把握しきれない場合は、行政書士や環境コンサルタントなど専門家への相談も選択肢になります。複数の許認可を並行して進める必要がある事業ほど、早い段階で専門家の知見を借りておくことで、後工程でのスケジュール遅延を避けやすくなります。
スケジュールへの影響
通常の太陽光発電事業ではFIT・FIP認定取得から運転開始までの期限が定められていますが、環境影響評価の手続きが必要な事業については、この運転開始期限が5年に延長される特例が設けられています。配慮書から評価書まで複数段階の手続きを踏むため、許認可全体に要する期間は事業によって大きく変動します。許認可の手続きが長期化すると、運転開始期限に間に合わなくなるリスクもあるため、できるだけ早い段階で必要な許認可を洗い出し、スケジュールに余裕を持って計画を進めることが重要です。
事業者が早期に確認すべきこと
- 自社の事業が環境影響評価法の対象規模に該当するかどうかを確認する
- 設置予定地が林地開発許可の対象面積(0.5ヘクタール超)に該当するかを確認する
- 農地転用・開発許可など、立地条件に応じた追加の許認可の必要性を確認する
- 許認可手続きに要する期間を踏まえて、FIT・FIP認定の運転開始期限に間に合うスケジュールを組む
- 自治体条例による上乗せ規制の有無も併せて確認する
よくある質問
環境影響評価が必要かどうかはどう確認すればよいですか?
発電出力40MW以上の第一種事業は必須、30MW以上40MW未満の第二種事業はスクリーニングで個別判定されます。基準は見直しが検討されているため、計画段階で経済産業省・環境省の最新の公表情報を確認するか、専門家に相談することをお勧めします。
発電出力はDC(パネルの定格容量)とAC(系統接続出力)のどちらで判定されますか?
系統接続段階の発電出力、つまりACベースで判定されます。パネルの定格容量(DC)ではない点に注意が必要です。
林地開発許可はどのくらいの規模から必要ですか?
森林を開発して太陽光発電施設を設置する場合、開発面積が0.5ヘクタールを超えると都道府県知事の許可が必要になります。
許認可手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?
事業の規模・立地・必要な許認可の種類によって大きく変動します。環境影響評価が必要な場合は複数段階の手続きを踏むため、早期の着手が重要です。
必要な許認可を取らずに工事を始めるとどうなりますか?
無許可で開発行為を行えば、行政指導や工事の中止命令、罰則の対象になり得ます。FIT・FIP認定の取り消しにつながるおそれもあるため、着工前に必要な許認可をすべて確認し、取得しておく必要があります。
まとめ
太陽光発電の許認可は、環境影響評価・林地開発許可・農地転用許可など、事業の規模や立地によって複数の手続きが関係します。許認可の手続きが長期化すると、FIT・FIP認定の運転開始期限に影響することもあるため、計画の初期段階で必要な許認可を洗い出し、早めに準備を進めることが重要です。なお、反射光に配慮が必要な立地では、反射光シミュレーションの結果を許認可の申請資料や住民説明会の資料として活用できます。Seldishの太陽光パネル反射光測定ツールも、こうした手続きの根拠資料づくりに活用いただけます。許認可全体の進め方にお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。