2026年4月、改正物流効率化法(正式名称:流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律)が新たな段階に入った。これまで大手物流事業者に課されてきた効率化義務が、荷主側にも広がりを見せている。
「うちはまだ対象じゃない」と思っている中小企業の担当者も多いが、特定事業者の指定範囲は今後拡大する可能性がある。もう一つ見落とされがちなのが、「法令対応」以前の問題として、配送計画・積載効率・運送記録をExcelや紙でまとめている会社が、いざ数字を求められたときに出せない状態になっているという点だ。
この記事では、改正物流効率化法の概要と中小荷主への影響を整理したうえで、「何を記録・管理しておくべきか」「今のExcel管理の何が限界なのか」を業務設計の観点から考える。
改正物流効率化法、2026年4月に何が変わったか
特定事業者制度とは
改正物流効率化法(2024年法律第32号)は、2024年5月に成立し、2024年10月から段階的に施行された。2026年4月からは、年間発着荷物量や取扱貨物重量が一定規模を超える「特定荷主」「特定物流事業者」への義務が本格化している。
具体的には、以下が求められる。
- 物流効率化のための計画作成・報告
- 積載効率や輸送頻度の改善に向けた取り組み
- 国土交通省・経済産業省への年次報告
対象となる荷主企業は年間300億円超の売上規模が目安とされているが、グループ全体での集計や将来的な閾値見直しにより、今は対象外でも将来変わりうる。
「対象外だから安心」は危険な理解
法令の対象になるかどうかとは別に、自社の配送実態を把握しておくことは事業継続の観点から必要になっている。取引先の大手メーカーや流通企業が特定荷主に指定されると、「配送頻度を減らせないか」「まとめ配送に協力してほしい」という要請が増える。これに答えられるだけのデータが手元にないと、商談の土台に立てなくなる。
中小荷主がよく陥るExcel管理の限界
パターン①:出荷台帳が属人化している
中小企業の多くでは、出荷指示・配送依頼・送り状発行が「担当者の脳内とExcel」で回っている。担当者が不在になったとき、積載効率のデータを集計しようとしたとき、月次レポートを作ろうとしたとき——そのたびに「全部手でかき集める」作業が発生する。
これは単なる手間の問題ではない。数字の整合性が怪しくなり、どの数字を正とするかで現場が混乱する。
パターン②:取引先・商品ごとの集計ができない
積載効率の改善を考えるには、「どの取引先への配送が多いか」「どの商品カテゴリが小口配送に偏っているか」を把握する必要がある。Excelシートが取引先ごとに分かれていると、この集計は毎回手作業になる。月1回でも負担になるのに、週次で見せてほしいと言われると対応しきれなくなる。
パターン③:改善施策の前後比較ができない
積載効率10%向上を目標に混載配送を始めたとして、「実際に上がったかどうか」を検証できなければPDCAが回らない。改善前後のデータが別ファイルに散っていると、比較に数時間かかる。施策を入れたのに効果を確認できない状態は、改善が続かない典型パターンだ。
Excel管理を続けることのリスクについては、「Excel・紙管理を放置するリスクと業務アプリ化のタイミング」でより詳しく解説している。
では何を整えるべきか——業務設計の観点から
まず「記録すべき項目」を決める
法令対応にせよ社内改善にせよ、最初に決めるのは「何を記録するか」だ。物流効率化の文脈では最低限、以下が必要になる。
- 出荷日時、届け先(住所・エリア)
- 配送手段(自社便/委託/宅配)
- 荷物重量・容積(積載効率の計算基準)
- 配送頻度・ロットサイズ
これらが一元管理されていれば、集計も比較も格段に楽になる。
SaaSで「だいたい」はできる——でも業種固有の要件がある
市販の配送管理SaaSは、宅配・EC物流向けに最適化されているものが多い。取次型の荷主(食品卸・工業部品・資材など)が使うには、「品番管理の粒度が合わない」「取引先の特殊指定(届け時間帯・納品書フォーマット)に対応できない」という壁が出る。
機能の80%は合っていても、残り20%の業種固有フローに対応できないがために、結局Excelと二重管理になる——というパターンは珍しくない。
SaaSと専用業務アプリの選び方については「汎用SaaSと専用業務アプリ、自社に合うのはどちら?」も参照してほしい。
専用業務アプリが選択肢に入るケース
以下のような条件が重なるとき、専用業務アプリを検討する価値がある。
- 既存の管理フローをSaaSの型に合わせるコストが高い
- 取引先ごとの個別対応(CSV出力形式・帳票仕様)が10社以上ある
- 社内の担当者が限られており、ツール切り替えコストを最小化したい
専用アプリは初期投資が必要だが、「現行フローをそのままデジタルに写す」設計ができる点が最大のメリットだ。ただし、要件定義が甘いと作り直しになるリスクもある。着手前に「何を自動化したいのか」を明確にしておくことが前提になる。
業務アプリ化を検討するときの判断チェックリスト
以下の項目をチェックしてみてほしい。
- 配送記録が担当者ごとに別管理になっている
- 月次の積載効率集計に2時間以上かかる
- 取引先ごとに帳票フォーマットが異なり個別対応している
- 配送管理SaaSを試したが自社フローと合わなかった
- 担当者が変わると管理方法が変わる
2つ以上当てはまるなら、現行管理の見直しを検討する段階に来ている。
まとめ
改正物流効率化法への対応は、「法令に直接かかるかどうか」だけで考えると判断を誤りやすい。取引先の動向、社内の管理実態、いざデータを求められたときの対応力——この三つを合わせて見たとき、「今のExcelで本当に足りているか」を問い直す契機になる。
まず記録すべき項目を決め、現行フローで何が取れていて何が取れないかを整理する。そこから先の「SaaSで対応するか、専用アプリを作るか」の判断は、自社の業種固有要件の重さ次第だ。