2026年6月24日 AI活用

問い合わせ対応・カスタマーサポートへのAI活用法

問い合わせ対応は、AI活用の効果が分かりやすい領域のひとつです。同じような質問が繰り返し届く業務では、AIによる一次対応を導入することで、対応時間を大きく減らせる可能性があります。一方で、AIに任せきりにすると顧客満足度を下げてしまう場面もあります。本記事では、問い合わせ対応にAIを活用する際の向き不向きと、導入の進め方を解説します。

AIが向いている問い合わせの特徴

AIによる対応が効果を発揮しやすいのは、内容が定型的で、過去の回答パターンが決まっている問い合わせです。営業時間・料金・利用方法といった、FAQに載せられる種類の質問はその典型です。

また、営業時間外や休日の問い合わせにも即時対応できる点も大きな利点です。これまで「翌営業日まで回答できない」となっていた一次対応を、AIが先に受け付けることで、顧客を待たせる時間を減らせます。

海外からの問い合わせがある場合、多言語対応も検討する価値があります。生成AIを活用したチャットボットであれば、英語や中国語などの問い合わせにもその場で対応でき、外国語に対応できる人材を新たに採用・教育するコストをかけずに、対応できる範囲を広げられます。

AIが向いていない問い合わせ

一方、個別事情に踏み込んだ相談や、感情的な対応が必要なクレームには、AIだけで対応するのは適していません。登録されていないイレギュラーな質問や、複雑な事情が絡む相談に対して、AIが的外れな回答を返してしまうと、むしろ顧客の不満を強める結果になります。

現実的な進め方は、定型的な一次対応はAIに任せ、AIが対応しきれない内容は人にスムーズに引き継ぐ「ハイブリッド対応」です。AIの回答に「この内容については担当者からご連絡します」といった引き継ぎの選択肢を用意しておくことで、AIだけで無理に解決しようとする失敗を防げます。

STEP 1 問い合わせ 顧客からの質問・相談 STEP 2 AIが一次対応 自動応答で内容を確認 STEP 3 引き継ぎが 必要か? 判定基準 ・同じ質問を3回以上言い換えても答えられない ・クレームに関わるキーワードを含む  いずれかに該当する場合は引き継ぎ 該当しない AIで回答完了 定型的な内容に対応 該当する 有人対応に引き継ぎ 担当者が対応

引き継ぎの判断基準は、あらかじめ明確にしておくとよいでしょう。たとえば、同じ質問に3回以上言い換えて答えられない場合や、クレームに関わるキーワードが含まれる場合は、自動的に有人対応に切り替える、といったルールです。判断基準を曖昧にしたままAIに任せきりにすると、顧客がAIとのやり取りを何度も繰り返すだけで解決しない、という事態につながります。

導入前に必要な準備

チャットボットを導入する際、最初の壁になりやすいのが、FAQデータの整備です。過去の問い合わせ内容が個人のメールや記憶に残っているだけで、まとまった形になっていない場合、AIに学習させる前にデータを整理する作業が発生します。

AI導入の費用とROIの考え方で触れた「隠れたコスト」と同じ構造で、この準備作業を見積もりに入れていないと、導入後に想定以上の時間がかかることがあります。よくある質問とその回答を一覧化する作業は、AI導入の前段階として、早めに着手しておくことをお勧めします。

シナリオ型とAI型という2つの選択肢

チャットボットには大きく2つのタイプがあります。あらかじめ用意した選択肢やフローに沿って回答する「シナリオ型」と、自由な文章での質問に生成AIが答える「AI型」です。

シナリオ型は、対応する質問の範囲が決まっている場合に向いており、比較的低コストで導入できます。営業時間や料金プランの案内など、選択肢を順にたどっていけば回答が決まる用途に適しています。AI型は、自由な言葉での質問にも対応できる柔軟性がありますが、FAQデータの整備や、誤った回答をしないような調整に、相応の手間と費用がかかります。

どちらを選ぶかは、問い合わせの内容がどれだけ多様かによって決めるとよいでしょう。問い合わせの種類が限られているなら、まずはシナリオ型から試すのもひとつの選択です。逆に、表現の仕方が毎回異なる質問が多い場合は、AI型のほうが対応の幅を確保しやすくなります。

導入効果の測り方

導入効果は、対応件数と対応時間の両方で測ることをお勧めします。AIが一次対応できた件数の割合と、担当者が対応する問い合わせ1件あたりの時間がどう変化したかを記録すれば、削減効果を数値で確認できます。

計算の考え方は、AI導入の費用とROIの考え方で紹介した時間削減効果の計算方法と同じです。対応時間の削減分に担当者の時給を掛けることで、効果を金額に換算できます。

たとえば、月間の問い合わせ件数のうち半分をAIが一次対応できるようになり、1件あたりの対応時間が10分から3分に短縮できたとします。1件あたり7分の短縮効果があるため、月間200件のうちAIが対応した100件分では「7分×100件=約11.7時間」の削減になります。この時間に時給を掛ければ、月単位での削減効果が見えてきます。上記はあくまで一般的な目安としての試算であり、実際の効果は問い合わせの内容や件数によって変わります。

導入後は改善を続ける

チャットボットは、導入した時点で完成するわけではありません。AIが答えられなかった質問のログを定期的に確認し、よくある未回答の質問をFAQに追加していくことで、対応できる範囲が徐々に広がっていきます。

導入直後は、想定よりも未回答が多く出ることもありますが、これは改善のための材料です。最初から完璧な回答精度を目指すのではなく、運用しながら育てていくという前提で導入計画を立てると、現場の期待値とのズレを防げます。

顧客体験への影響を忘れない

導入効果が数字で見えてくると、対応範囲をどんどん広げたくなりますが、顧客体験への影響も併せて確認することが欠かせません。AIの回答に満足できなかった顧客が、人に相談する手段を見つけられず離脱してしまうと、対応時間は減っても顧客満足度は下がってしまいます。

AIチャットボットの画面には、有人対応への切り替え方法を分かりやすく示しておきましょう。加えて、顧客からの評価やフィードバックを定期的に確認することも、運用上欠かせない視点です。「AIに対応してもらった」こと自体に抵抗を感じる顧客もいるため、必要に応じて人による対応であることを明示する、あるいは有人対応への切り替えを案内するなど、顧客側が選べる状態を保っておくことをお勧めします。

よくある質問

チャットボット導入の費用はどれくらいかかりますか?

シナリオ型であれば無料〜月額数千円程度から始められるものもありますが、自由な文章に対応するAI型は、初期費用・月額費用ともに高くなる傾向があります。対応したい問い合わせの範囲によって、適したタイプも変わります。

FAQが整理されていない状態でも導入できますか?

導入自体は可能ですが、AIの回答精度はFAQデータの質に左右されます。過去の問い合わせ内容を一覧化する作業を、導入の準備段階として行っておくことをお勧めします。

AIの回答精度はどれくらいで安定しますか?

未回答だった質問をFAQに追加していく改善作業を継続することで、運用開始から数ヶ月程度で対応範囲が安定してくることが多いです。導入直後から高い精度を期待しすぎず、改善を続ける前提で計画を立てることをお勧めします。

まとめ

問い合わせ対応へのAI活用は、定型的な質問への一次対応から始めると効果を出しやすい領域です。AIが対応しきれない内容は人に引き継ぐ仕組みを用意し、対応件数・対応時間に加えて顧客体験への影響も確認しながら進めることが大切です。導入の進め方そのものは中小企業のAI導入の進め方で解説している業務整理の考え方がそのまま当てはまります。自社の問い合わせ内容にAIがどこまで対応できそうか判断に迷う場合は、Seldishの「AI導入・活用支援」にご相談ください。

AI導入・活用支援 業務の棚卸しからシナリオ設計、PoC、定着支援まで一貫してサポート。 問い合わせ対応へのAI活用も、向き不向きの整理からご相談いただけます。 詳細を見る →
← コラム一覧に戻る

関連する記事

2026年6月24日

ChatGPT・Claude・Gemini、中小企業はどれを選ぶべきか

2026年6月24日

建設業・製造業の人手不足をAIで解決する方法

2026年6月24日

AI導入時に気をつけたい情報漏洩・セキュリティ対策

人手不足の現場に、ともに向き合う。

サービスのご相談・お見積り・課題についてのご相談など、まずはお気軽にご相談ください。