「賃貸革命」「いえらぶCLOUD」「ReDocS」といった賃貸管理システムを導入している管理会社は多い。入居者情報・契約情報・家賃入出金までは一元管理できても、オーナー報告や原状回復精算といった管理会社ごとに細かく作法が異なる業務になると、結局はExcelや紙の帳票に戻ってしまうケースが少なくない。本稿では、汎用の賃貸管理システムが対応しきれない具体的な壁を整理し、システムを使い続けるべきか、業務アプリで補完すべきかの判断基準を示す。
賃貸管理システムを入れてもExcelが消えない理由
賃貸住宅管理業法により、管理会社にはオーナーへの定期報告が義務づけられている。多くの賃貸管理システムはオーナー向け報告書のテンプレートを標準搭載しており、業者が入力すればある程度自動で報告書が組み上がる。しかし、これはあくまで「システムが想定した標準フォーマット」の範囲での話だ。管理戸数が増え、取引先オーナーの顔ぶれが多様になるほど、標準テンプレートでは吸収しきれない例外対応が積み重なり、担当者はシステムとExcelを行き来する二重運用から抜け出せなくなる。
汎用システムが対応しきれない4つの壁
オーナーごとに異なる報告書フォーマット
長年取引のあるオーナーほど「昔からのフォーマットでないと困る」というケースが多い。管理会社側から見れば非効率でも、オーナーとの関係維持を優先せざるを得ない場面は少なくなく、システムの標準テンプレートに寄せきれないまま個別Excelが残り続ける。
原状回復・敷金精算の個別交渉プロセス
退去立会いから原状回復の見積もり、入居者・オーナー双方との費用按分交渉まで、敷金精算は物件の状態や入居年数によって毎回条件が変わる。写真記録・見積内訳・交渉経緯といった非定型情報をシステムの決まった入力項目だけで管理するのは難しく、担当者個人のメモやExcelに実態が残ることになりやすい。
巡回点検・修繕依頼のワークフロー
建物巡回点検や修繕依頼は、清掃会社・設備業者など複数の外部業者が関わる。業者ごとに報告のフォーマットや連絡手段がバラバラだと、システムに一元化する前段階で情報が分散し、結局は管理会社側で手作業の取りまとめが発生する。
水道代など、オーナー個別ルールの計算
水道代の請求方法や共益費の按分ルールはオーナーごとに個別設定されていることが多い。一部のシステムはルールをまとめて登録する仕組みを備えるが、それでも吸収しきれない例外は必ず残り、最終的には担当者の手計算やExcelでの調整が必要になる。
なぜExcel併用から抜け出せないのか
背景には二つの事情がある。ひとつは、賃貸管理システム側のカスタマイズ対応の遅さだ。既存の標準機能で足りない部分を個別カスタマイズしようとすると、実装まで年単位の時間がかかることも珍しくない。もうひとつは、Excelの自由度の高さそのものが手放しにくい理由になっている点だ。自社の業務フローに合わせてその場で項目を追加・変更できるExcelは、標準化されたシステムよりも現場の実態に即応できてしまう。結果として、システムは「基幹の記録簿」、Excelは「例外処理の作業台」という役割分担が固定化し、二重入力・転記ミス・属人化が慢性化する。
SaaS継続か、業務アプリ補完かの判断基準
すべてを作り直す必要はない。判断は次の3つの軸で行うのが実務的だ。
- 例外対応の頻度 ― 管理オーナーのうち、標準テンプレートから外れた報告書・精算処理が必要な割合はどれくらいか。一部の主要オーナーに限定されるなら、その部分だけを業務アプリで補完する方が現実的なことが多い。
- 個別ルールの複雑性 ― 水道代按分や共益費計算など、オーナーごとの計算ルールがどれだけ入り組んでいるか。ルールの数が管理可能な範囲を超えているなら、汎用システムのマスタ設定に頼らず、専用の計算ロジックを持つ業務アプリの方が保守しやすい。
- 現場の入力工数 ― 巡回点検や修繕依頼で複数業者からの報告をとりまとめる作業に、担当者がどれだけの時間を割いているか。この工数が恒常的に大きいなら、業者向けの簡易入力フォームを業務アプリとして用意し、システムへの取り込みを自動化する余地がある。
逆に、例外対応が一部のオーナーに限られ、担当者の手間も許容範囲であれば、無理にシステムを増やさずExcel運用を維持する判断も合理的だ。すべてをシステム化することが目的ではなく、管理会社の業務実態に見合った投資かどうかを見極めることが出発点になる。
判断に迷ったら
賃貸管理システムを入れ替えるかどうかを検討する前に、まずは「どの業務が、なぜExcelに戻ってしまうのか」を棚卸しすることをお勧めしたい。原因が例外対応の多さにあるなら、既存システムはそのままに、報告書作成や精算計算など負荷の高い一部の業務だけを業務アプリで補完する選択肢がある。Seldishでは、こうした管理会社固有のワークフローを最短3営業日で試作し、実際の業務に合うかを確認しながら開発を進めるアプローチを取っている。自社の業務がシステム化に向いているか判断が難しい場合は、一度相談してみてほしい。